2011年 11月 02日
編集悪魔
なんだか話も盛り上がらなくて、……困ったなあ、これじゃ面白い記事も書けないなあ。
というか、別にオレは仕事でこのおばさん(同年齢ぐらいでしたが。あっ、十分おばさんか)に会っているだけなのに、おばさんの話を聞きたくて聴きたくてたまらない、というわけでもないのに、どうして「なによアンタ、アタシのことをそんな目で見ちゃって。アタシ、そんなに安い女じゃないのよ」的な目で見られなくちゃならないのでしょうか。
まあいいや。必要なことはネットで調べて書けばいいや。もうこの取材はとっとと引き上げて、とりあえず帰って酒でも飲もう……なんて思いながら話を聞いているとき、ふと先方が「その頭は、毎日お手入れしているのですか」などと聞いて来たのでした。
……ここでプチン、と私の中の「何か」が目を覚ましてしまったのでした。そう、邪悪な、いつもの「アクマ」な私です(笑)。
もうこの人とは一生会うこともないだろうし、どう思われたっていいや、適当な話を盛ってしまおう……と思ってしまったのです。
……で。
「いえ、毎日ってことはないですけれど。仕方がないんですよ。ときどき法事とか、そんなときにかり出されますからね。あっ、実家は世田谷にあるお寺なんですよ」
「あっ(驚)、そ、そうなんですか。……いずれはお継ぎになるのですか」
「そう言われてますけどね。まだやりたいことがいっぱいあるんで、いまだに逃げてるんですけれどね。この仕事が楽しいから辞められないし、ああ、私、こう見えても役者なんですよ。舞台中心ですけれどね」
「ええっ! そうなんですか。ぶ、舞台?」
「はい、下北沢の小劇場とか、そんな感じのところで細々やっているから、趣味みたいなもんですけれどね。役者だけじゃとても食って行けません。あっ、きょうチラシ持ってくればよかったなあ。宣伝できたんだけど」
「ど、どんな演劇なんですか?」
「まあ、不条理劇、ですね。理屈っぽくて、でも最終的にはみんな脱いじゃう、みたいな」
「えーっ。み、みんな?」
「さすがに女の人は下着姿ぐらいまでですけれどね」
「(啞然)……そんなことやっちゃうの? 男の人は?」
「まあ、それは観てのお楽しみ、みたいな(笑)」
「(啞然パート2)やだあ」
「まあ、盛り上がり次第、の話で。普段はまったくフツーですよ」
「自由でいいわねえ。……失礼ですけれど、いま、おいくつなんですか」
「40ちょうどです」(←全然不思議がられなかったぞ)
「お子さんはいるの? というか、結婚なさっているの?」
「はい、というか、なさってた、みたいな」
「ああ、バツ1?」
「バツ2、です」
「(啞然その3)バ、バツ2? そ、そうなんですか。……お子さんは?」
「ええ、いま高校2年です。そろそろ受験の準備しなくちゃならないんでしょうけれど。まあ一緒に住んでないから、どういう状態かは分からないんですけれどね」
「奥さん、いえ、もと奥さんのところに住んでらっしゃるのね」
「ええ。でも、ああ最初の女房なんですけれどね。アル中でね。もうこっちが引き取った方がいいかと思ってるんですけれどね。まあ、もうしばらくしたら大人ですからね。ホンニンの意思に任せようかと」
「……(啞然その4)そうですか。……なんだか大変ねえ。でも、いろいろだわねえ」
あまり話を盛りすぎるとウソがバレると思ったのでそれ以上はやめておいて(笑)……まあ、その後最終的には話は盛り上がり、いろいろな話を聞き出すことには成功したので、このへんで許してやろう(なにが許す、だ)と思い、これ以上の話の「盛り」はやめておきましたがね。
ああ、面白かった。「編集王子」改め「編集悪魔」の面目躍如、とったところでした。
というか、この話もちょっとだけ「盛って」いたりするんですけれどもね(ス、スミマセン)。
おれも、気をつけなきゃ(何を?)