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東京坂道百景 その21「硝子坂」

c0135618_1125263.jpg 「今、神戸の坂の上にあるケーキ屋さんでアルバイトをしています。マドレーヌがとてもおいしいケーキ屋です。そのうち送りますね。届いた頃に、ちょうどいい酸味が利いていると思います(笑)」なんて手紙をもらったのは、傷心の思いで予備校に通っていた、18歳の夏でした。

 さすがにケーキは届きませんでしたが(笑)、何回か届いた手紙もそのうち来なくなり、いつの間にかその人は「思い出の人」となってしまいました。
 しかし、30歳を過ぎた頃、出張でたまたまその街に行くことがあったのですが、ふと思い出して、仕事の合間にそれらしき坂道を探してみたところ、思いのほか簡単に坂道は見つかり、たぶんここだろう、というケーキ屋さんも見つけることができたのです。

 もちろんその人はいるはずもないのですが、勇気を振り絞って店の中に入ってみました。意味もなく汗びっしょりになって、おすすめだと言っていたマドレーヌを、ひとつだけ買うのはなんだかなあと思い、なんと10個も買ってしまった私なのでした(苦笑。せめて5個ぐらいにしておけばよかったのですが)。
 店を出たとき、坂の上から、きらきらと輝く美しい海がうそのように間近に臨めました。10年ほど前、この坂道をニコニコしながら自転車で駆け下りていく、その人の姿が一瞬見えたような気がしました。
 「とうとう 来たねと 夢の中〜」。何度も何度も、同じフレーズが頭の中をよぎっていました。

 長期の出張だったので、マドレーヌをおみやげに持って帰るわけにはいかず、その後3日間ほど、ホテルでぼそぼそと、ひとり頬張り続けたのはちょっと情けなかったのですが(笑)。

 きらきら光る「硝子坂」の上から、愛しい人が手招きをしている姿が見えるのですが、近眼の私は、その人が本当に愛しい人なのか、愛しい人だったとしても、その人が本当に手招きをしているのか、それとも、さよならと手を振っているのか、わからないままに、いつもあたふたとしているところがあります。
 本当は全速力で坂を駆け上がり、確かめればいいことなのですが、やっぱりさよならの手を振っていたんだということがわかったら、思い込みの激しい私には耐え切れず、強がって遠回りでも違う道を選択し、結局ラビリンスに迷い込んでしまうのです。
 そんなことを繰り返し繰り返し、もう嫌というほど繰り返している、我が人生です。

 まあ、迷路だと思っていたら、実はあるところに続く一本の道だったり、坂の下かと思ったら坂の上だったり、ということもあるのが人生です。はっと気がついたら、美しい海の景色が目の前に広がっているということも、きっとあるに違いありません。そのときそのときで、これだと思った道を、信じて歩いていくしかないのかもしれません。

 ……などと長々と書きましたが、写真の坂は神戸の坂でもなく「硝子坂」でもありません。目黒区東山にある「名もなき坂」なのです(笑)。
 でも、せっかくだから、きょうから私ひとりで「硝子坂」と呼ぶことにします。今度この坂を上ったら、どこからかマドレーヌの甘い香りが漂って来るような気がするのです。

ソレタ大文化祭は11月20日からです。ぜひお越し下さい。
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by yochy-1962 | 2008-10-22 02:06 | 東京坂道百景 | Trackback | Comments(4)
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Commented by asuno-kazemachi at 2008-10-23 15:22
高田みづえ、好きだったんですよ。
おかみさんになっちゃいましたけど、惜しかったような気が・・・(笑)
Commented by bay-hamakujira at 2008-10-23 16:37
彼女は西へ、ヨッチーさんは東へ、という感じかな。甘酸っぱく切ない青春っすねぇ。妙にオジサン、反応しちゃいました(笑)。
ただ、「硝子坂」を聞くと、相撲部屋を連想してしまうのが難。ゴメン、甘い思い出に水をさして。
Commented by yochy-1962 at 2008-10-23 18:17
風待ちさま 高田みづえ、いい歌手でしたよね。難しい歌でもさらりと歌ってしまう、ホントに歌のうまい歌手でした。そのまま現役でいたら、たぶん演歌にシフトチェンジしていたような気もしますが。
Commented by yochy-1962 at 2008-10-23 18:21
濱鯨さま ホント、甘酸っぱい青春です。いまはなんだかアクが強いタケノコみたいな味になっちゃってます(笑)。食べ過ぎるとめんちょができちゃいます。
「硝子坂」はもともと木之内みどりのアルバムに入っていた曲ですから、そう思えば相撲部屋は出てこなくなるかと思います。その代わり、「笑いながら怒る人」が連想されてしまうかもしれませんが(笑)。

by yochy-1962