2009年 06月 17日
隠れた名曲・昭和歌謡 その23 黛ジュン「風の大地の子守唄」
レコード盤ってのは繊細な代物で、傷がついたり、変に湾曲してしまったら命は終わりですから、ちゃんと縦にするか、真横に置いて保存しなくてはならず、聴くときは針が飛ばないように、じっとその場に佇んで、決して踊ったり騒いだりラジバンダリ(もう古いか)してはいけなかったのでした。いわば、レコードを聴く時間というのは、ある種「儀式」のような時間といっても過言ではなかったと思います。
その代わり、レコード盤はビニールでパッキングされていないため、お願いすればレコード店で「試聴」もさせてくれたのでした。少ないお小遣いの中からレコード代を捻出するのですから、購入に関して失敗は許されません。試聴はそりゃもう真剣な作業です。
まあ、淳子ちゃんとかアース・ウインド&ファイヤーなどのレコードなら、試聴などせずに購入していたのですが、「黛ジュン」のように、さすがに即購入することはできない「未知の」アーティストについては(いや、私ぐらいの年代にとっては、ということですね)、そのようにして購入するか否かを決めていたものでした。
……っていうか、黛については最初から購入するつもりなどなかったのですがね。当時、映画の主題歌ということでCMで流れていた「風の大地の子守唄」を、ただ全部聴いてみたい、という軽い気持ちで試聴したいと願い出たのでした。確か高校2年の終わりごろだったと思います(そんなことせず勉強しろってか)。
その前の年、ジュディ・オングの「魅せられて」がブレイクした影響を受けたのか、「ワールド歌謡路線」の二匹目のドジョウを狙った感がある曲なのですが、残念ながらいまひとつパッとせず、どちらかといったらその次に出た「男はみんな華になれ」のほうが売れてしまったのでした。とてもいい曲だったのですがね、なかなか現実は、思惑通りにはいかないものです。
で、試聴させていただいた私と友人ですが、最後のところで見事にレコードの針が飛び、延々と「♪ゴーアローン ユーアーフリー」が続いてしまったのです。
店員があたふたとレコードを停止している間に、悪魔2名はフフフと笑いながら、その場を逃げるように立ち去ったのでした。まあ別に悪いことをしたわけじゃないんですけれどね。